20年前のデリー空港は、日本から来たら、空港でなかった。
まず、照明が暗い、暗すぎる。そして汚くて、殺風景で、機関銃持った軍人がうろついてて、もう関空から来ると、どこへ来てしまったのか、これが国際空港なのかと思うわけです。
今でこそ、キレイになって、ムドラ(印)を結んだ手が壁から突き出て、”incredible !ndia”なんてなってますが。
とにかく、すでに飛行機が着陸した瞬間、スパイス臭ただよう機内での拍手喝采に、異国を感じてうろたえているのに、飛行機から降りても日本人なんて自分達だけ、到着は深夜1時!
とにかく、両替、そして、プリペイドタクシー。
しかし、ここに行きたいって何ていうの???
両替はエクスチェンジプリーズでパスしたけど、、、カウンターでホテルの住所を見せながら、もじもじする若い日本人女子2名。
どっからどうみてもカモでしかない。
アイ ウォントゥ ゴートゥ スイスパレスホテル
多分、人生初で3つ以上の英単語を続けて話す。
代金を払って、運転手について空港のエントランスをでると!
汗とスパイスとお香と熱気と湿度となんかまじりまざった匂い!
薄暗いオレンジ色の街灯の下、柵ごしに群がる人、人、人!!!
濃い顔の中のぎょろっとでかい目が、ぎらぎらこっちを見ている。
ハロージャパニ!ハロー!タクシー!ハロー!タクシー!ハロー!
柵からでて掴むかの勢いだ。
怖い!!!どうしよう、すごいとこに来てしまった。
とにかくタクシーに乗り込んで出発!って思ったら、何故?もう一人男の人が、あらよって乗ってきた。
深夜のデリー、車もない、人もない、私の知らない薄暗い街をタクシーは、ぐるぐるぐるぐる走り続ける。
今まで走ったことのない、ロータリー交差点を通る度、遠いところに来てしまったんだって、怖さが増した。
30分、1時間、2時間、、、や、やばい。
でも、なんて言えばいいのか、言ったところで、ここがどこかも分からないのに、どうすれば、、、。
ガイドブックや旅行会社のおじさんが言ってた怖い話が思い出され、生きた心地がしない。
前に乗る、がたいのいいインド人2人が何かぼそぼそ話はじめた。
そしてタクシーは、ちょっとお店が並んでいるような通りに止まった。
男の一人がお店の一つの、閉まっているシャッターをノックすると、ガラガラガラとシャッターが開いた。
迷ったから、俺の友達に聞く、みたいなことを言ったように思う。
中から優しそうなお兄さんが出てきて、どこのホテル?見せてごらん?と私達の持っているホテルの予約書を覗き込んだ。
すぐそこだよって言われて、日本から来たの?大丈夫だよ、ナントカカントカでチェックインしたらパスポート持って戻っておいでねって言われた。
どういうわけか、タクシーはちゃんとホテルについて、チェックインもスムーズにいけた。
荷物を部屋において、
「パスポート持って戻ってこいって言ってたよね」
などと言って、なぜ、なぜ、なぜ?????
私達はパスポートを持って、また、タクシーに乗ってしまったのです!
アホすぎる!未だに、あの時の行動は謎。これぞインディアンマジック!初インド上陸あるあるです。
極限の恐怖を感じると、人は判断力がなくなるのだろうか。
さきほどの半分開いたシャッターのお店から、優しそうなお兄さんが、いらっしゃーいと私達を中に招きいれた。
さすがに出されたチャイは飲まなかったが(睡眠薬とか入ってる時あるから)、彼は、私達が何日間インドにいるのか、どこに行きたいのか、予算はどれくらいなのかとか聞いてきて、カタコトで私達が答えると、OK、じゃこういう感じね、ここにサインしてって言われた。
はいはいとサインしかけるJちゃんに、サイン?!待って!!!
私は子どもの頃から父親に、連帯保証人になるなとか、人をみたら泥棒と思えとか、サインは簡単にするなって言われて育った。
サインはダメ!と、とめると、
優しいお兄さんは顔をこわばらせて、何いってんの?ここは旅行代理店だよ。せっかく時間かけて、君達のためにツアー組んであげたのに、今さらそれはない、というようなことを言ったっぽかった。
サインしないと外に出してもらえなさそうな空気が漂ってた。
しどろもどろで、私は言った。
アイ ウォントゥ シー インディア バイマイセルフ
私自身で!バイ・マイ・セルフ!
するとお兄さんは、分かったって言って、私達を外に出してくれた。
が、外はまだ真っ暗。ツアーを組めばコミッションをもらえたであろうタクシーが待っていて、ホテルに戻りたいなら200ドルだ!!って言われた。
アイ ウォーク!
私とJちゃんはホテル目指して夜中のデリーをダッシュした。