インド、ケララ州にあるシバナンダアシュラムで私のヨガをめぐる旅は始まった。
当時私の英語力は、やっと
「ついてこないで!」
とか、
「触らないで!」
とか、
「下痢です」
とか、
「水飲んでも吐きます」
とか、
「初め20ルピーって言ったよね、だからあなたのリキシャに乗ったのに今50ルピーって、騙そうとしてる?」
とか、
「私は土産物屋には興味ないし、もう行くゲストハウスは決めてあるからって、そのゲストハウス閉まってる?またまた、みんなそれ言うから。とにかく、向かって!」
ぐらいなもんで。
インヘイルって何?
エックスヘイルって何?
ショルダーはわかるけど、ニーってどこ???
きょろきょろして、ああ、ニーは膝ね、インヘイルは息すう、エックスヘイルは吐くか!なるほど!って。
そんな私でも、確か20人くらいのクラスに、メインの先生一人、アシスタントの先生二人がきっちり丁寧に教えてくれたおかげで、ヨガの基礎の基礎に触れることができた。
猫背だった私の背中は、少しずつ伸びはじめ、(腰の筋肉が目覚めるまでは痛くてつらかったけど)、ぽかーんと開いた口は先生に何度も口!っていわれて、閉じはじめた。
その時、ある尼僧さんのレクチャーの時間があってね。
なんとか聞き取れたパートがあって。
水は英語でウォーター。
でも、ヒンズー語ではパニ。
フランス語ではドロ、
スペイン語ではアグア。
でも、どの言葉も同じ物質のことをさしているのよ。
人は、それぞれのフィルターをとおして世界をみているのです。
だから水でもウォーターでもパニでもなく、
あの透明で流れる、
時に優しく、
時に激しい、
それをみなさい。
むせかえるジャングルの香り、見たことのない亜熱帯の植物をバックに、
先生の薄いオレンジ色の袈裟。
シバナンダアシュラムでの午後。
私のヨガをめぐる旅のはじまり。